三輪 華子 Hanako Miwa

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「ゆめ」

笹山 央(工芸評論家)

東京で開催されたアートフェアの会場の一角に、「ゆめ」 と題した三輪華子のインスタレーションが発表された。茶室の空間を模してガラスの板が床から少し離して四角く設置され、作者や観者はその上に上がることもできた。壁に 「ゆめ」 と書いた軸がかかり、茶室の床のガラスを通して、蓮の葉の形をした陶オブジェが透かし見える。

「ゆめ」 という言葉には 「うつつもまた夢」 「夢から覚めてもまた夢の世界」 といった、現実と夢の間の仮想的な関係のようなことが込められている。そして蓮の葉や花の形象には 「うつろいの中の永遠」 のイメージが託されている。とはいえ、作品をどのように解釈するかは観者の自由である。

取材の中で 「見るということはフィクションだと思う」 という発言に出会えたのが面白かった。そういう考えは、華子の中で最近になって浮上してきたのだそうである。表現とは何かという問題に、一歩深く足を踏み入れたことの証しである。

陶オブジェがこの人の表現メディアだが、インスタレーション(しつらえ)という方法は、ものの意味や見ることの意味を問いかける仕掛けとして、もうひとつの重要な役割を担っているようである。

TAIKI 04号

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ゆめ

撮影 オフィスG 松野 誠

サイズ: 4畳半

三輪 華子 Hanako Miwa