「妙・三輪華子展」
森由美 (戸栗美術館 学芸室長)
画廊の床に敷き詰めた鏡の上に作品を並べる。白、淡いピンク色の蓮花が黒い葉の間に咲き、それを映す鏡は水面となって、まさに蓮池。
萩の三輪家に生まれた三輪華子さんの、陶芸家として初めての個展。並んだ作品は力作であった。花、蕾、葉。作品の総数を伺わなかったが三十点以上(実際は七十点)はあるだろう。蓮池のイメージは以前からあたためてきたとのこと、それを時間をかけて形にした。開きかけた蕾、大きく開いた花、虫食いの表情が一つ一つ異なる葉は大鉢ほどのサイズで、実際に器として使える。
柔らかなクリーム色、ほのかなピンク色の蓮花は、黒陶焼成の黒い煙のような跡が肌にしみ込んでいる。一見、その様子が大理石のようだが、近付き手に取ってみると、低温で焼き上げた黒陶を丁寧に磨き込んであり、むしろ肌はしっとりと柔らかい。花や葉の柔らかさを表現するための技法の選択なのだろう。そして、その柔らかさとほのかに紅さす白色は、まさに萩焼のものである。
作品に溢れる若い感性は、見る人の印象に強く残るであろうが、むしろ、一つ一つの作品に見られる実に真摯な姿勢に好感を持った。虫食いの蓮葉の縁、葉脈に見られる丁寧で真面目な仕事。そこにはイメージ先行ではない、作陶技術への確かな取り組みが見て取れる。陶家に生まれ、小さい時からその仕事に接してきたからこそ、初めての個展において、これだけしっかりした作品が発表されたのだろう。今後、さらに表現力を磨いて、作品に艶が出て来るのが楽しみである。
陶説(2001年7月号)
妙
撮影 田中学而
妙 荷葉: 陶 H12.8×W39.2×D37.81cm